マクロビオティックの原理「陰陽理論」
陰陽とはマクロビオティックの原理であり、また東洋の伝統的な思想でもあります。中国の中医学やインドのアーユルヴェーダなどもこれにあたります。
日本にも古くから物事を「陰陽」という観点で物事をみる、という考え方があります。
陰陽とは中国から始まった思想で、森羅万象、宇宙のありとあらゆる事柄をさまざまな観点から「陰」と「陽」に分ける思想です。
陰と陽は互いに対立する属性をもったいわゆる「気」で、世に存在する万物の生成消滅の変化はこの2つの気によって起こされている、というものです。
陰と陽の気の働きによって万物の事象を理解し、さらに将来をも予測しようとする、というのが陰陽思想です。
陰陽思想について
人間にも陰陽があり、活動や食生活の内容、季節などでそれぞれの陰陽バランスをおおよそ判断できます。それを基に食物を選ぶようにすると、より効果的だといえます。
性別からみると、基本的に男性は陽、女性は陰といわれています。性別における陰陽の差は、他と比べて最も大きな差といえます。
活動による陰陽差では、アウトドア派の人(スポーツをしたり、外で動き回っていることが多い人)は陽、インドア派の人(家の中でじっとして机に向かっていたり、本を読んでいる人)は陰性です。
住んでいる土地による陰陽差もあるようです。寒い地方に住んでいる人は、その気候に合わせて陰性になり、暑い地方に住んでいる人は陽性になるといわれています。ちなみに食物においては、寒い地方のものは、陰性のものを温める必要があるため陽性、逆に暑い地方のものは、陽性のものを冷ます必要があるので陰性になります。
人間の陰陽変化に最も影響を及ぼすのが「季節の変化」です。
季節を分けると春夏秋冬となりますが、暖かく動植物が活動的になり、太陽の熱が強く、気温もあがる春・夏は陽性、寒くなり太陽の光も弱まり、動植物の冬眠など、活動が抑えられてくる秋・冬は陰性です。
この自然の陰陽変化は、室温調節などで簡単に変えられるものではありません。
なぜなら大地や自然、地球のエネルギーそのものが生きるものすべての身体に働きかけて、陰陽の性質に関わっているからです。
基本的に暖かい季節(3〜8月)に生まれた人は陽性、寒い季節(9月〜2月)に生まれた人は陰性になります。
いわれてみると、7月や8月に生まれた人はスポーツが得意な人や、性格もとても明るく、クラスの中心にいるタイプの人が多いようにも感じます。
12月や2月など寒い時期に生まれた人は、冷静沈着で色白のようなタイプの人が多いような気もします。
一概には言えませんが、なんとなく夏生まれは熱血タイプ、冬生まれは冷静タイプのように感じられます。
これまで人間には陰陽の性質があるとお話してきましたが、絶対的にはいえません。
陰陽の考え方の本質として、陰と陽は交互に訪れるというものがあります。
陰、すなわち寒く、暗い印象を受けることの後には、必ず陽、明るく活気のある事があり、この陰と陽が交互に繰り返されていくということが陰陽論の考え方です。例えば、会社や学校などで大きな失敗をしたとします。
しかし、悪い事やいやなことはそう長くは続きません。
必ず明るい方向へ向かっていきます。
つまり、陰陽が交互するのが人生だ、という考え方なのです。
このことから、人間の性質は陰にいくときもあれば陽にいくときもあります。
食品の陰陽バランスについて
人間の性質だけではなく、食物にも陰陽の性質があります。
マクロビオティックでは、陰陽の調和のとれた状態(これを※中庸といいます)を目指しているので、それに基づいて食品を選んでいく必要があります。
これは、万病の原因が陰陽どちらか一方に傾き、一方が過剰になることによって引き起こされる、と考えられているためです。
そのため、陰陽のバランスが崩れない、真ん中あたりの「やや陽」「やや陰」「ほぼ中庸」のゾーンの食品を選んで相互にバランスをとり、主食の玄米を中心(食事全体量の少なくとも5割)にして食べるのが理想的です。
※各人の陰陽バランスに応じて調和がとれているということです。
このマクロビオティックの考え方において食品を選ぶ際に重要なことは、「中庸ゾーンの食物を選ぶこと」です。バランスが一方に偏っているものは避ける必要があります。
まず、避けるべき食物についてみてみましょう。
陽性食品
バランスが陽性に偏りすぎてしまっている食物は次の通りです。
精製塩/卵/肉類/チーズ/魚介
上記にあげたものは陽性が強すぎる食物です。これらをすぐに食生活から切り離すことは現代人には困難なことなので、徐々に量を減らすなどして対応しましょう。
陰性食品
次にバランスが陰性に偏りすぎている食物です。
白米などの精製した穀物/冷凍食品、缶詰/熱帯性の果物や野菜、ナス科の植物(ナス、トマトなど)/牛乳などの乳製品 コーヒー、紅茶などカフェインを含み、刺激の強い飲み物/香辛料/精製した甘味料(砂糖など)/アルコール/防腐剤、着色料などの化学物質を含有する食品(インスタント、長期保存のきくものなど)
上記のように、陰性はかなり量が多く感じられます。人工的に作りだされたものや、調味料などが陰性に属するようです。
中庸食品
最後に中庸の食品です。
陰陽のバランスがとれているので、最も好ましい食品です。
玄米などの未精製の穀物/豆腐、豆類を原料にした食品(小豆、ゴマ、油揚げ、豆腐など)/温帯性の野菜(ごぼう、ニンジン、カボチャ、大根、キャベツなど)/海藻類(ひじき、わかめ、のり、昆布)/海水からとった天然のあら塩、植物油/刺激の弱い飲み物(黒豆茶、タンポポ茶(タンポポコーヒー)、甜茶、杜仲茶、ルイボスティーなど)/ナッツ類/温帯性の果物/精製していない自然甘味料(てんさい糖、米飴、メープルシロップなど)/天然古式製法の醤油、味噌、梅干し、たくあん など
上記の食品をみていくと、大体のものが自然由来であることがわかります。天然古式製法というのは、昔から続いている製法のことなので、無駄な添加物が含まれていないものを指します。甘味料は、自然のものであっても、どちらかというと陰性よりの食品なので、摂り過ぎに注意する必要があります。
この中庸の最も好ましいとされる食品の中にも、どちらかというと陽性寄り、陰性寄り、という食品があります。
大まかに分けたものをさらに細分化していく、というものです。
まず、大きさ、色、硬さで分類できます。
大きく柔らかいものが陰性、小さく硬いものは陽性です。
陰陽の見分け方
色は赤っぽい方が陽性、青っぽいものが陰性です。例として、小豆と大豆を比べると、小豆の方が小さくて赤いので、大豆よりも陰性といえます。次に、育ち方による分類法です。短期間で上に伸びるものは陰性、長期間をかけて下に向かって伸びるものは陽性です。
例えばタケノコとにんじんでは、タケノコは短期間で上に伸びるため陰性です。
それに対しニンジンはゆっくりと下に向かって成長します。
一般的に根菜類は成長に長い時間を必要とするため、陽性といえます。
次に気候による分類法です。冷涼な地域で育った野菜は、その土地に住む人々(陰性)の調和をとるために陽性になります。
逆に暑い土地で育つ野菜は、その土地に住む人々(陽性)の調和をとるために陰性になります。日本は温帯に属するので、陰にも陽にも寄り過ぎない、温帯性の野菜や果物を食べることが望ましいです。
熱帯地域で育つものは、その土地に住む人々の身体を冷やすために実るので、極端に陰性です。日本ではそれらを避けた方がバランスを保てるのです。
陰陽を分類する方法は多々ありますが、今回はその一部をご紹介しました。
マクロビオティックの根底にはこの陰陽論があるのですが、全体を通していえることは、どちらか一方に偏り過ぎることなく、バランスのとれた生活を送ることが大切だということです。
現代に生きる私たちが実践するのは難しいかもしれませんが、日々少しずつでもいいので取り入れていければいいですね。